中小企業の基幹システム、実際いくらかかるのか
月額だけを比べても判断できません。設定・移行・教育・改修・止まったときの費用まで含めて、3年の総額で並べる方法。稟議に貼れる形にしました。
「基幹システムって、いくらぐらいですか」と聞かれたときに、 金額だけを答えても役に立ちません。同じ金額でも、含まれているものが違うからです。
ここでは、稟議に貼れる形で費用の並べ方を書きます。
選択肢は4つ
| 初期 | 月々 | 向いている会社 | |
|---|---|---|---|
| Excel のまま | 0円 | 0円 | 請求が月30件以下。担当が1人で、当分辞めない |
| パッケージ(SaaS) | 0〜数十万円 | 数万円〜 | 自社のやり方を、標準に寄せられる |
| ノーコードで自作 | 0円 | 数万円〜 | 作れる人が社内にいて、その人が辞めない |
| 作ってもらう(受託) | 数百万円〜 | 保守が別途 | 変えられない業務があり、規模も大きい |
上ほど安く、下ほど自由です。当たり前に見えますが、 検討がこじれるのは、たいていこの順番を飛ばして下から見に行くときです。
月額の比較は、判断の材料にならない
見積に出ている月額の差は、3年の総額で見ると小さくなります。 効いてくるのは、見積に書かれていないほうです。
| 隠れがちな費用 | 目安 | 説明 |
|---|---|---|
| データ移行 | 数万円〜数十万円 | 過去のExcelをどこまで入れるか。「全部」と言うと跳ね上がる |
| 社内教育 | 人数 × 数時間 | 使えるようになるまで、通常業務は止まらない |
| 改修 | 年に数回 | 運用して初めて出る変更。必ず出るので、出ない前提で組まない |
| 並行運用 | 1〜3か月 | 移行中は旧と新の両方を回す。ここがいちばん重い |
| 止まったとき | — | 復旧までの時間。バックアップの頻度と、連絡先が誰か |
並行運用の重さを見落とすと、導入は失敗します。 「1週間で切り替えます」という話に乗って、月末に両方回すことになり、 その月の残業代のほうが月額より高くつく、というのはよくある形です。
3年の総額で並べる
稟議に出すなら、この形にしてください。
初期費用
+ 月額 × 36
+ 移行(一度きり)
+ 教育(人数 × 時間 × 時間単価)
+ 改修の見込み(年 ◯回 × 単価 × 3)
─────────────────────
= 3年の総額
そして、比較対象は「今のまま」を必ず入れること。 今のままにも費用はかかっています。
転記にかかっている時間 月 ◯時間 × 時間単価 × 36
間違いの手直し 月 ◯件 × ◯時間
引き継ぎ・属人化 担当が辞めたときに止まる日数
「今のままは0円」と書いた稟議は通りません。 0円でないことを数字で見せるところが、この作業のいちばんの山場です。
判断は、結局この1問で決まる
自社のやり方を、標準に寄せられますか。
寄せられるなら、パッケージが速くて安い。寄せられないなら、作るしかない。 そして「寄せられない」と言う会社の多くは、実は寄せられます。
寄せられない本物の理由は、こういうものです。
- 大口の取引先から、指定の様式で出すよう求められている
- 業界固有の商習慣(歩引き、手形、出来高、材工分離など)が金額計算に入っている
- 官公庁の提出物に、決まった帳票がある
一方で、寄せられるのにやめてしまう理由もあります。
- 「前からこうやっているから」
- 「〇〇さんがこの形で作ったから」
- 「Excel のこの色分けが無いと分からない」
後者しか出てこないなら、標準に寄せたほうが、3年の総額は確実に安くなります。
全部入れ替えなくていい
もうひとつ、費用を大きく左右するのが入れ替える範囲です。
会計ソフトは変えなくていい。給与も変えなくていい。 変えるのは、いま Excel と紙でつないでいるところだけにする。
見積 → 請求 → 入金 → 書類 ここを1本にする
会計 仕訳データを渡すだけ
給与・勤怠 触らない
範囲を絞ると、移行も教育も並行運用も軽くなります。 全部入れ替える計画は、たいてい途中で止まります。
最短で判断するための3つの数字
見積を取る前に、社内でこれだけ数えてください。
1 月あたりの請求件数
2 同じ金額を打ち直している回数(見積→請求→会計で何回か)
3 経理・事務にかかっている時間(人数 × 時間)
この3つがあれば、どの選択肢が現実的かは、その場で分かります。 そして、この3つを聞かずに金額だけ出してくる相手は、避けたほうが安全です。
よくある質問
中小企業の基幹システムは、だいたいいくらぐらいですか?
月額数万円から数十万円まで幅がありますが、判断に効くのは月額ではなく3年の総額です。初期の設定費用、データ移行、教育、年に数回の改修、そして今のやり方を変えるためにかかる社内の時間まで含めると、月額の差は総額の一部でしかなくなります。
見積に出てこないのに、あとから効いてくる費用はありますか?
3つあります。データ移行(過去のExcelをどこまで入れるか)、社内教育(使えるようになるまでの人件費)、そして改修(運用しはじめてから必ず出る変更)です。どれも見積の外に置かれやすく、後から追加費用として出てきます。
自社開発とパッケージ、どちらを選ぶべきですか?
自社のやり方を変えられるかどうかで決まります。変えられるならパッケージのほうが速く安く済みます。変えられない事情(業界固有の商習慣、大口取引先の指定様式など)があるなら、無理に合わせるより作るほうが結果的に安くなることがあります。