中小企業の基幹システム、実際いくらかかるのか
月額だけを比べても判断できません。設定・移行・教育・改修・止まったときの費用まで含めて、3年の総額で並べる方法。稟議に貼れる形にしました。
「基幹システムって、いくらぐらいですか」と聞かれたときに、 金額だけを答えても役に立ちません。同じ金額でも、含まれているものが違うからです。
ここでは、稟議に貼れる形で費用の並べ方を書きます。
選択肢ごとに、費用の発生場所が違う
市場全体の価格調査ではなく、見積を比較するための整理です。製品・規模・支援範囲で金額は変わります。
| 選択肢 | 確認する費用 | 運用で確認すること |
|---|---|---|
| Excelを続ける | ライセンス・保管・作業時間 | 更新者と履歴が追えるか |
| パッケージを使う | 月額・人数追加・導入支援 | 標準機能で自社の業務が回るか |
| ノーコードで作る | 利用料・作成と保守の時間 | 作った担当者以外も保守できるか |
| 開発を依頼する | 設計・実装・保守・改修 | 必要な範囲と変更の手順が明確か |
どの選択肢でも、外部への支払いと社内の作業時間を分けて確認します。「Excelなら0円」と置くと、既存の運用にかかる手間が比較から抜けます。
月額以外の確認項目を、見積に添える
| 項目 | 提供元に確認すること |
|---|---|
| データ移行 | 対象期間・件数・整形作業・再取り込みの範囲 |
| 教育 | 操作説明の回数と、追加時の費用 |
| 改修 | 契約に含む変更と、別見積になる変更 |
| 並行運用 | 期間と、二重入力を誰が担当するか |
| 障害対応 | 連絡先、対応時間、復旧とバックアップの範囲 |
移行や教育が含まれる契約もあります。別途費用と決めつけず、見積書の中で何が含まれているかを確かめます。月末の切り替えを想定するなら、その時期の社内負担も見積もります。
3年の総額で並べる
稟議に出すなら、この形にしてください。
初期費用
+ 月額 × 36
+ 移行(一度きり)
+ 教育(人数 × 時間 × 時間単価)
+ 改修の見込み(年 ◯回 × 単価 × 3)
─────────────────────
= 3年の総額
そして、比較対象は「今のまま」を必ず入れること。 今のままにも費用はかかっています。
転記にかかっている時間 月 ◯時間 × 時間単価 × 36
間違いの手直し 月 ◯件 × ◯時間
引き継ぎ・属人化 担当が辞めたときに止まる日数
「今のままは0円」と書いた稟議は通りません。 0円でないことを数字で見せるところが、この作業のいちばんの山場です。
判断は、結局この1問で決まる
自社のやり方を、標準に寄せられますか。
寄せられるなら、パッケージが速くて安い。寄せられないなら、作るしかない。 そして「寄せられない」と言う会社の多くは、実は寄せられます。
寄せられない本物の理由は、こういうものです。
- 大口の取引先から、指定の様式で出すよう求められている
- 業界固有の商習慣(歩引き、手形、出来高、材工分離など)が金額計算に入っている
- 官公庁の提出物に、決まった帳票がある
一方で、寄せられるのにやめてしまう理由もあります。
- 「前からこうやっているから」
- 「〇〇さんがこの形で作ったから」
- 「Excel のこの色分けが無いと分からない」
後者しか出てこないなら、標準に寄せたほうが、3年の総額は確実に安くなります。
全部入れ替えなくていい
もうひとつ、費用を大きく左右するのが入れ替える範囲です。
会計ソフトは変えなくていい。給与も変えなくていい。 変えるのは、いま Excel と紙でつないでいるところだけにする。
見積 → 請求 → 入金 → 書類 ここを1本にする
会計 仕訳データを渡すだけ
給与・勤怠 触らない
範囲を絞ると、移行も教育も並行運用も軽くなります。 全部入れ替える計画は、たいてい途中で止まります。
最短で判断するための3つの数字
見積を取る前に、社内でこれだけ数えてください。
1 月あたりの請求件数
2 同じ金額を打ち直している回数(見積→請求→会計で何回か)
3 経理・事務にかかっている時間(人数 × 時間)
この3つがあれば、どの選択肢が現実的かは、その場で分かります。 そして、この3つを聞かずに金額だけ出してくる相手は、避けたほうが安全です。
よくある質問
中小企業の基幹システムは、だいたいいくらぐらいですか?
製品、利用人数、導入範囲で変わるため一律の相場は示せません。月額とあわせて、たとえば3年の総額で比べます。初期の設定費用、データ移行、教育、年に数回の改修、そして今のやり方を変えるためにかかる社内の時間まで含めると、月額の差は総額の一部でしかなくなります。
見積に出てこないのに、あとから効いてくる費用はありますか?
3つあります。データ移行(過去のExcelをどこまで入れるか)、社内教育(使えるようになるまでの人件費)、そして改修(運用中に必要になる変更)です。契約に含まれる場合と別途見積になる場合があるため、事前に範囲を確認します。
自社開発とパッケージ、どちらを選ぶべきですか?
自社のやり方を変えられるかどうかで決まります。変えられるならパッケージのほうが速く安く済みます。変えられない事情(業界固有の商習慣、大口取引先の指定様式など)があるなら、無理に合わせるより作るほうが結果的に安くなることがあります。